
【第八話】本藍16回染め
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[第八話]
本藍16回染め
こんにちは“5大陸オーガニックデニム”を企画開発したPLANNERの木村です。
前回は糸染めについてお話しさせて頂きました。
今回も引き続き染めについて説明させて頂きます。
前回説明させて頂きましたが、ジーンズの「色落ち」は、たて糸の染色方法によって大きく左右されます。
また染色方法が同じでも染料の種類や精練方法、染め回数などによって色の落ち方や色目が変わる為、非常に重要なポイントになります。
今回糸の染めをお願いさせて頂いた、坂本デニム株式会社さんは
1892年創業
1966年に日本初の縦糸連続染色方法の開発に成功しました。
伝統の藍染めを原点に、インディゴ染色の技術革新を継続的に推進されています。
現在「環境に優しい」をテーマに環境への負荷を低減する製造に努め
染色方法を独自の開発により行われています。
またそれに伴った設備を導入され活動されています。
■CO2の削減
■洗浄薬品の削除
■水質汚染の低減
■排水汚泥の削除
通常糸染めの前に、糸(綿)についた天然由来の油や紡績による油を除去する工程(精練)があります。
従来では高温のお湯で精練を行いますが、現在の新しいシステムでは電解水を用いて油分を分解します。
その際、常温にて効果を発揮する為 CO2の削減効果と染色の「中白」効果に繋がります。
高温で精練するより常温で精練する方が染料の浸透を軽減出来ます。
また染色後の洗浄も従来は洗浄剤を使用していましたが、電解水処理を行うことで薬剤を使用せず中和処理が可能となります。
坂本デニム株式会社さんは「世界で一番環境に優しい染色工場」を目指し、様々な取り組みを行っています。
会社敷地内でオーガニックコットンの栽培や工場内で出る廃棄物を再利用し関連施設に提供したり、社員全員が環境に意識して活動を続けています。
伝統のある日本屈指の染色工場様と80周年モデルの“5大陸オーガニックデニム”の打ち合わせをさせて頂きました。
ビッグジョンの創業80周年記念モデルを作成するにあたって
「究極な素材を使い、特別な商品を作りたい」
「本藍でどこまで求める色が出せるか?」
本藍は合成インディゴ(ピュアインディゴ)に比べると染まり難く時間が掛かります。
染まるのに時間が掛かる分、堅牢度が良いのが特徴です。
また合成インディゴに比べると値段が数倍高いです。
「求める色は決まっています」
「本藍特有の深い藍色」
坂本デニムさんから「本藍と合成を混ぜて色の濃度を上げて見てはどうか」
という提案を頂きました。
気持ち的には「NO」ですが、色々染め試験を見させて頂いて最終ジャッジをしようと思いました。
これから染色試験による色出しがスタートします。
数週間後、試験が終わり見させて頂きました。
「本藍のみでは染色濃度に限界がある」というのが結論でした。
「確かに綺麗な藍色ではあるが色が浅い」
本藍と合成を混ぜた物も見せて頂きましたが、
色は濃色に染まっているが、赤黒く本藍特有の色ではない。
坂本デニムさんに無理を承知で御願いしました。
「本藍のみで深い藍色を目指して欲しい」
今まで坂本デニムさんでロープ染色12回までしかやった事が無かった。
12回染めといっても途中乾燥する工程が何度も入って出来るのに相当時間が掛かる。
それをもっと染め回数を増やして染め濃度を上げるという事は
坂本デニムさんも今までやった事のない試みです。
「ビッグジョン創業80周年記念モデルの特別な商品」
「究極な素材を使い、究極な商品を作りたい」
この想いが職人魂に火をつけました。
「出来るかどうか解らないがやってみましょう」
「今まで誰もやった事のない本藍のみの深い藍色」
液層に浸ける時間、染料の濃度、染め回数等、経験豊富な技術者が知恵を振り絞り、
機械を調整しながら試験を繰り返し行いました。
そしてようやく求める深い藍色がロープ染色16回染にて完成しました。
出来上がった瞬間は感謝と感動しか有りません。
日本の技術と職人のプライドが詰まったこの糸は特別な縦糸
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